Obsidianでツェッテルカステンをつけてみた
ツェッテルカステンってなに?
どうやらツェッテルカステンというものがあるらしいぞ、という話を聞いたので私も真似をしようと思ったのです。
さて、ツェッテルカステンとはなんでしょうか。どうやらメモの一形態のようです。一枚のカードにひとつの事柄を書き込んで、番号を振るなどして他のカードと関連付けしておきます。そうやって知識のネットワークを作っていくやりかたのようです。個人向けのナレッジベースとして面白いかも知れません。さっそくやってみたいです。
しかし、私は紙のカードなんて使いたくありません。かさばって持ち歩けないし、書き換えられないし、バージョン管理ができないし、せっかくネットワークを作るならビジュアライゼーションしたりしたいです。
Obsidian ってなに?
いままで Markdown エディタとしてしか使ってこなかったObsidianを活用する時が来たようです。
さて、Obsidian とはなんでしょうか。これはメモアプリです。他のメモアプリと違うところは、作成したメモは.md ファイルになっていて、自由に再利用ができることです。
.md?なんのこっちゃ?という方もいるかもしれません。これは Markdown という形式です。プレーンテキストに以下のような簡単な記号を付加することで、テキストを修飾することができます。
# ポラーノの広場
あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。
## 一、遁げた山羊
また、さまざまな拡張が考えられています。たとえば、文書にメタデータを含めたいときはこうします。YAML Front Matter という形式です。
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title: 銀河鉄道の夜・風の又三郎・ポラーノの広場 ほか3編
publisher: 講談社
publish: 1971-07-01
isbn10: 4061310291
isbn13: 9784061310292
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# ポラーノの広場
これらを適切に書くことにより、プレーンテキストでは表現できない装飾やデータを付加できます。そして、HTML に変換したりもできます。実を言うと、このブログ自体も Markdown 形式で書いています。
Obsidian はこれを採用することにより、再利用性の高いメモを作成することができます。あなたはいつでも Obsidian をやめることができるし、使い続けることもできます。別のソフトウェアを利用して、様々な形式に変換することもできます。
では、Obsidian はただの Markdown エディタなのでしょうか?いいえ、真髄はここからです。
Obsidian でツェッテルカステンを作成する
Obsidian ではメモ同士の関連付けを行うことができます。[[]]
で他のメモのファイル名を囲むとリンクとして機能するのです。これを利用して、ツェッテルカステンをつけることができます。以下は宮沢賢治と他の人物を関連付けています。
# 宮沢賢治
## 関連項目
- [[森荘已池]]
- [[草野心平]]
- [[高村光太郎]]
このようにしてできていくネットワークを図に可視化することもできます。というか、図を眺めてメモ同士の関連性や興味のクラスタについて考えるのが、私のメインの使い方です。図を眺めていると、思いがけないところに関連があったり、複数の近接するメモが洞察を生んだりします。
Git でバージョン管理する
編集をしていると、過去のデータを呼び起こしたくなることがたびたびあります。そんなときに便利なのが Git です。ゲームのセーブデータを思い出してください。途中で致命的な失敗をしても、セーブデータが無事ならそこからやり直せます。便利ですね。
Git について語っていくとそれだけで記事が数限りなく書けてしまうので、こまかいことは今回は言及しません。今回は、あくまで Obsidian の拡張機能を紹介するに留めておきます。
Obsidian には拡張機能が豊富にあります。そのうちのひとつ、Obsidian-Git を利用することが可能です。
私のツェッテルカステン
せっかくなので私のツェッテルカステンの内容を一部紹介します。タイトル、関連付け、内容の順に紹介していきます。では、適当にメモを芋づる式に見ていきましょうか。
注意:以下のメモには誤りが含まれている可能性があります。正確性は検証されず、出典が明確に示されておらず、いかなる保証もなく、あるがまま提供されます。なので、何かの参考にはせず、こんなのもあるんだ、程度に捉えておいてください。
エスペラント
ルドヴィコ・ザメンホフとその協力者たちが考案・整備した計画言語。 国際語。国際補助語。
話者人口は約 200 万人。母語話者は約 1000 人。
ラザロ・ルドヴィコ・ザメンホフ
エスペラント → ラザロ・ルドヴィコ・ザメンホフ
ロシア帝国領ポーランド生まれ。ユダヤ人。
当時のポーランドは民族のるつぼで、
- ロシア人
- ポーランド人
- ドイツ人
- ユダヤ人(イディッシュ語を話す)
で構成されていた。
彼は人々が憎しみ合う原因が共通言語の欠如にあると考え、国際補助語を考案した。
ザメンホフとホロコースト
ラザロ・ルドヴィコ・ザメンホフ → ザメンホフとホロコースト
彼は民族同士の和解に希望を持っていたが、彼の子孫はホロコーストによって命を落としている。唯一生き延びたのは孫のルイ・クリストフ・ザレスキ=ザメンホフであり、家族のその後については彼の著書『ザメンホフ通り―エスペラントとホロコースト』を参照されたし。
ホロコースト
ザメンホフとホロコースト → ホロコースト
ナチスドイツとその同盟国、および協力者による、ヨーロッパのユダヤ人約六百万人に対する国ぐるみの組織的な迫害、虐殺のこと。
ホロコースト-燔祭
ホロコースト → ホロコースト-燔祭
ギリシャにおいて、家畜の非食部を焼き神への分前とする儀式。
また、ユダヤ教において、子羊を焼き神への生贄とする儀式。全焼の供物 (burnt offering)。
転じて、族殺。
“The holocaust”と言う時はナチスドイツのユダヤ人虐殺を指す。
浦上燔祭説
ホロコースト-燔祭 → 浦上燔祭説
カトリック信者の永井隆(医学博士)の言説(『長崎の鐘』など)に対し、高橋眞司(長崎大学名誉教授)が名付けた。
広島が盆地であったのに対して長崎は山が多く、被害にむらがあった(福山雅治の父などはこのために生き残っている)。生き残った者と死んだ者がおり、永井は「原爆は天罰である(ソドムとゴモラに例えた軍人がいることは有名だろう)」という言説を否定して、死んだ者の無罪を主張せねばならなかった。
また、永井は放射線医で、放射線は人を救うという考えを持っており、戦時中はフィルム不足で X 線に晒されながら透視で診察を続けたほどで(このために白血病で夭折する)、原子力を否定できなかった。
原爆は天罰ではなく、原子力も罪ではないなら、これは何だ?
そういう問いに答えようとしたのが、浦上燔祭説である。
- 永井は原爆をどう見るか - 神の摂理である。
- 永井は原爆死没者をどう見るか - 汚れなき子羊の燔祭である。
- 永井自身を含めて生き残った被爆者はどうすればいいか - 神が与えた試練であり、神に感謝すべき。
多くの反論があり、弟子の秋月辰一郎は「ついていけない」と言っている。
いとし子よ
浦上燔祭説 → いとし子よ
……愛されるものは滅ぼされないのだよ。愛で身を固め、愛で国を固め、愛で人類が手を握ってこそ、平和で美しい世界が生まれてくるのだよ。
いとし子よ。
敵も愛しなさい。愛し愛し愛しぬいて、こちらを憎むすきがないほど愛しなさい。愛すれば愛される。愛されたら、滅ぼされない。愛の世界に敵はない。敵がなければ戦争も起らないのだよ。
永井隆『いとし子よ』
個人レベルのモデレーションは先鋭化を招くという言説に対する反論
いとし子よ → 個人レベルのモデレーションは先鋭化を招くという言説に対する反論
Bluesky における個人レベルのモデレーションに対して、これは意見の先鋭化を招く、とおっしゃる方がいたので、反論を考えてみる。
敵がいなければ喧嘩ができない。喧嘩ができなければ過激化できない。
ソーシャルメディアにおける意見集団の先鋭化は、対立する意見集団があって帰属意識と敵愾心がうまれることにより発生するので、個人が自身の判断でフィルターを設定する分には先鋭化しない。(付け加えるのであれば、彼の言説は「(個人の)意見の先鋭化」と「意見集団の先鋭化」を混同している。社会的に問題として扱われるのは後者である)
そもそも、モデレーションは個人の嗜好や意見というより「攻撃を防ぐ、文化的・イデオロギー的対立を防ぐ」といった要素が強いので、前提が共有できていない。私の落ち度じゃん。反省。
(自ら敵のいない環境を設定することはネットワーク上に敵の存在を赦すことでもあり、また、敵の存在を赦さないことは殲滅以外に選択肢が無いことでもあり、「敵も愛しなさい」と通じるところがあると考えた)
Bluesky
個人レベルのモデレーションは先鋭化を招くという言説に対する反論 → Bluesky
ATProtocol により実現されるサービスのひとつ。
Twitter から独立・分社した組織「公益法人 Bluesky」が進める、ATProtocol のモデルケース。
2023 年に一般に向けてサービスを開始した。
大きな特徴は以下の通り。
- 分散型 単一の管理者に独裁されない。ユーザーは自由に事業者・提供者を選択し、相互にやり取りできる。
- アルゴリズムのオープンマーケット レコメンドアルゴリズムを自由に作成し公開できる。他のユーザーは自由に選択し購読できる。
- アカウントポータビリティ サーバからサーバへアカウントを移行できる。付随する投稿などのデータは「リポジトリ」という形式で自主的に管理できる。
- オープンなモデレーションツール 不適切な投稿やアカウントなどのラベル付けを自由に行って配信できる。他のユーザーは自由に選択し購読できる。