哲学対話ってなんだ? - 読書メモ
ユルゲン・ハーバーマス(1929)という人物がいる。
彼は近代において、理性は自然を征服するために使われてきたとし、そのありかたに疑問を呈した。彼は、これからは共同生活のなかで合意を形成するために理性を使うことが必要だとした。
哲学対話イベントをしてみたいと思った動機は、共に暮らすうえで何らかの合意を形成する営みを実践したいと思ったことだ。だからこうして文を書いている。
とりあえず、入門書を読んでみた。役に立ちそうなところだけかいつまんでメモしたので、記録を残しておく。ちゃんと知りたい人は出典を参照すること。
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書籍データ
- タイトル: ゼロからはじめる哲学対話
- 著者: 得居千照, 永井玲衣
- 出版社: ひつじ書房
- 出版年月日: 2020 年 10 月 01 日
- ISBN: 9784823410321
- ページ数: 376
哲学対話とは何か?
人が生きる中で出会うさまざまな問いを、人々と言葉を交わしながら、ゆっくり、じっくり考えることによって、自分と世界の見方を豊かにしていくことだ。
学校などの哲学の時間で実践されることがある。なので、「子供のための哲学(P4C)」と呼ばれることもある。ハワイなどで盛んだ。
話し合いのなかで、より深い問いを見つけていく。だから、最初のテーマにこだわらなくてもいい。新たな疑問が見つかれば、どんどんテーマは移していいのだ。
結論は出なくてもいい。いろいろな疑問を見つけて、最後は疑問をみんなに持ち帰ってもらおう。
哲学対話とは何でないか?
哲学対話はディベートではない。勝敗を作ってはいけない。
あらかじめ用意された結論をより強固なものにする営みでもない。むしろ、そういった先入観に対して「本当にそうか?」と疑問を持つところから始まる。
結論を急いではいけない。ゆっくり、じっくり考える。無言の時間が生まれても、危険視することはない。ゆっくり考える時間が必要だ。
一連の流れ
テーマ決め
基本的に何でも題材になる。
- ~とはなんだろう
- ~はなぜだろう
といった定型文が使えることも多い。
対話を進める中でテーマの内容が改めて問い直されることもあるので、あまり固執してはいけない。
対話のなかでテーマを決めてもいい。抽選のおもちゃがあると決めるのに役立つ。
円になって座る
囲む中央になる焚き木的なアイテムがあるといい。みんなで円になって座るわけだ。
なくてもよいが、いま発言してもいい人を示す、持ち回りで回すコミュニティボールがあるといいかもしれない。
注意事項
注意事項を確認するといいかもしれない。
- 自分の言葉で話す(難しい言葉を使わない)
- よく聴く(人の話をさえぎらない)
- 考えが変わっていくことを楽しむ(全否定をしない)
対話をする
対話がうまく始まらないときは、ファシリテーターが呼び水となる発言をしてみることも有効だ。ただし、あまりレベルが高いとみんなが委縮してしまうかもしれない。全員が参加できることが重要だ。
困ったときのためのマジックワードを決めておくのも有効だ。例えば、ハワイの P4C では、
- SPLAT(Speak a little louder please = もう少し大きな声で)
- POPAAT(Please one person at a time = 一度に話せるのは一人だけ)
などがある。
日本語では「わん」= わかりません、などが考えられる。
記録をする
哲学ノートをつけてみると面白い。問いに対しての、対話を行う前に抱いている先入観を記録したり、対話中に気づいたこと、対話を終えてからの答えを残したりする。
ホワイトボードには注意が必要だ。黒板的なものは権威の象徴で、「これが絶対で、変更することはできない」という先入観を生み出す。
いい働きをした人にふせんを渡して他者評価をしたりできる。
感想
ほんとはもっといろいろ載っているのだが、私ができそうなこととしてはこれくらいなものだと思う。VRChat で哲学対話イベントがわりと盛り上がっているのがうれしい。私も混ざりたいのでやってみようと思う。
そういえば、以前友人が「哲学カフェを名乗るイベントに行ったが、キラキラ系の大学生が結論ありきの対談をするだけのイベントだった。周りの観戦者は対談に関心を示さず、飲み食いばかりをしていた」と言っていた。それはプロバガンダ放送であって、哲学カフェではないと思った。周りが関心を示さないあたり、死んだデモクラットという感じがしてむしろ風流だ。
こうはなりたくないものだ。先入観を持たないことは人間にはできないので、変な目的意識を抑えるくらいのことは頑張っていきたい。それこそノートに書いておくのが多少は効くだろう。
私はわりと偏っている。読む雑誌はナショナルジオグラフィックだし。そうでない人にはそうでないなりの理由がある。もっと早くに関税があればうちの工場は潰れないで済んだ、という人だっている。
ただ、単一の正義に傾倒するようなことだけは避けたほうがいいように思う。これからやるイベントが、その一歩になればうれしい。