哲学対話イベントで使える Udon ギミックを作った話 #1 - コンセプト
私は最近、VRChat 上で開催する哲学対話イベントで活用できるツールを開発しました。それは力学モデルを使用したメモツールで、哲学対話の場に新たな可能性をもたらすかな、もたらせたらいいなというものです。このシリーズでは、そのツールのコンセプトと開発経緯について扱います。
哲学対話とは何か?
哲学対話とは、日常生活の中から問いを見つけ出し、じっくりと時間をかけて考え、その問いをさらに深めていく営みです。結論を出すことが必須ではなく、問いを深めることが要点となります。この過程で、自分自身や他者の考えを理解し、新たな視点を得ることができます。
私は、哲学対話を通じて知的な営みを体験してみたいと考えました。知的な営みというのは、ここでは、共に暮らす中で何らかの合意や理解を形成すること、ということにしておきます。そのためには、お互いの考えを深く理解し共有する場が必要だと感じました。
また、哲学対話では難しい言葉を使わず自分の言葉で話すことが求められます。これは専門用語や複雑な表現を避けることに加え、自分自身が理解できているか確認するためにも有益です。
また、人の話をさえぎらずによく聞くことや考えが変わっていくことを楽しむ姿勢も大切です。全否定をせずに、相手の意見を尊重しながら対話を進めることが、深い問いを生み出す鍵となります。
なぜ哲学対話イベントにツールがほしいのか?
哲学対話の中で、思考のプロセスを記録し、可視化することは非常に有益です。普通そこでは QVPen が使われますが、これは編集や保存が難しく、また外部にエクスポートしにくいです。
そこで私は、テキストベースの黒板が欲しいと考えました。これなら外部にコピーできます。
しかし、単にテキストが共有できるだけでは不十分です。構造にツェッテルカステンを取り入れました。ツェッテルカステンは、ドイツ語で「カードの箱」を意味し、アイデアや思考をメモとして残し、それらを有機的に結びつける手法です。
この方法を使うことで、なぜその問いに惹かれたのか、どのような疑問が生まれたのかを詳細に書き残すことができます。
こういった外部ツールを使うことで、一旦現在のテーマを置いておき、別のテーマに移行することも容易になります。哲学対話では、特定のテーマに固執せず、テーマが移り変わることを楽しみたいです。先入観を研究によって修正し、新たな先入観を得るという循環を繰り返すのです。
力学モデルはツェッテルカステンの描画にぴったりだ
メモ同士の関係性を視覚的に表現するために、力学モデルを採用しました。力学モデルを使えば、メモ間の繋がりをネットワークグラフとして描画できます。頂点同士が引き合い、押し合う物理的なモデルにより、関連性の強いメモが自然とまとまって表示されます。
この視覚化により、思考の全体像を俯瞰したり、逆に一部に注目したりできます。哲学対話の場でこれを活用すれば、参加者全員で思考の地図を共有し、対話をさらに深めることができると考えました。
また、これらは床に表示することにしました。黒板のように出すこともできますが、黒板に書かれたものは最終的な結論と思われがちなのでやめました。みんなでたき火を囲むように思考のネットワークを囲み、議論ができたら楽しそうです。
したいこと
今回開発した力学モデルを用いたメモツールで、哲学対話で思考を深めるための役に立てたら嬉しいです。
次回予告
次回は、今回登場した力学モデルの具体的なアルゴリズムについて扱います。