三体2 黒暗森林 上 - 読書メモ

  • 著者: 劉慈欣
  • 出版社: 早川書房
  • 出版年月日: 2020 年 06 月 18 日
  • ISBN: 9784152099488
  • ページ数: 335

あらすじ

前回ほど濃くないので、3 章ずつメモを取る体制はやめた。だからといって面白くないわけではない。

第一部 面壁者

  1. 国連は、生存権の平等を図るため、人類の地球外脱出を禁じる。
  2. 国連は、三体世界の監視から逃れられる防衛担当者を作るため、四人の面壁者を選ぶ。
  3. 面壁者に選ばれた羅輯(ルオ・ジー)は、余生を過ごすため、エデンの園(彼がそう名付けた)で、自身が小説に書いた理想の女性と一致する荘顔(ジュアン・イエン)という女性とともに暮らす。

第二部 呪文

  1. 荘顔は羅輯から逃避を見出したため「決戦の時代で待っている」と残し人工冬眠に入り、しばしの別れとなる。
  2. 三体世界に与する者、破壁人が現れ、特攻隊構想をしていた面壁人フレデリック・タイラーの三体艦隊にお水をプレゼントしちゃおう作戦を暴く。タイラーは人類に対する罪の罰を欲するが、その立場上得られず、自殺する。結果的に罪への説得力を社会へ知らしめる形になり、面壁人の地位が下がる。
  3. 羅輯は思想に耽り、文潔が発案した宇宙社会学とその公理を深く検討する。「呪文」を送ることを発想し、実施する。遺伝子兵器によりダメージを受け、冬眠する。

メモ

宇宙社会学

公理

  1. 生存は文明の第一欲求である
  2. 文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である。

重要な概念

  • 猜疑連鎖
  • 技術爆発

3 つの回答

  1. 第三者の文明が地球や三体の位置を把握している可能性は無い。おおむねの方向と、両者の距離しかわからない。天の川銀河のオリオン腕に所在していることくらいはわかる。天の川銀河には 2,000 億ほどの恒星があるため、ひとつをマークすることは不可能。
  2. 2、30 個ほどの恒星間の相対的な位置関係をデータに含めることで、天の川銀河の中の任意の位置を表すことができる。しかし、データを受け取った者は 2,000 億の恒星を収録したデータベースを持っている必要がある。
  3. 惑星を持つ恒星で太陽に近く、かつ「羅輯がちょうどよいと感じる距離にあるもの」は約 50 光年先に所在する 187J3X1 である。(番号は発見された順番、J、E、X は惑星のタイプで木星型、地球型、それ以外。続く数字は当該タイプ惑星の数。この場合、187 番目に発見された恒星であり、木星型 1 つ、それ以外 1 つを持つ)

羅輯はテストとして「呪文」を 187J3X1 に送信した。50 光年圏内の恒星を除外したのは「呪文」の効果が地球に及ぶのを避けるためである。「呪文」の本番送信は終末決戦のときに行われる。

展開予想

第三者の文明が登場するのは間違いない。それも、地球や三体の文明レベルを遥かに超えた技術を持つ文明が。神が言及されているので調停を期待しているのかもしれないと思ったけれど、もしかしたら三体問題を意識していて、一方がもう一方を駆逐するという単純な運動を、三者が敵対しあったり味方しあったりといった複雑な運動に変えようとしているのかもしれない。優れた外敵がいれば敵対し合う者同士は団結できる、といった発想は葉文潔のものだから、彼はそれとは違う思想を持っているはず(でなければ違うキャラクターとして描いた意味がない)。

感想

前半は前回より楽だと思ったけど、後半では気を抜けないお話に!科学にブレイクスルーが起きている。でも、その下地を作るためにひどく長い課程が必要で、「今回は楽だな」と思ったのもそこを読んでいたとき。浅はかだった。前回「科学には地道な発達と跳躍的な発達がある」と言及されていたけど、それを見せてくれたのかも。

羅輯と荘顔の関係について、ハッピーエンドを願っているよ。私は悲劇や不条理も好んで読むんだけど、この物語はキャラの生活や行動に説得力があって愛嬌を感じるし、論理がエレガントだから不条理は似合わない。なんなら三体人もちょっとかわいいんだ。

集団の統率を取ろうとしたら究極の目的である「三体世界から人類を守る(ために、三体人に嫌がらせする)」が疎かになってしまう様が描かれていたね。もし神林長平の小説だったら、全力で敵に嫌がらせをするために敗北主義や逃避主義も黙認しておく方向になりそうだなと思ったよ。三体に出てくる組織は私の中に収録された意見たちの分布から少しズレたところにあって、私はそのズレも楽しんでいるよ。

余談だけど、黒柳徹子の自伝『窓際のトットちゃん』も行動に対する説得力が強いと母から聞いたよ。いつか楽しんでみたい。映画にもなってるみたいだね。私の中で、物語は自分のペースで進めたいから書籍のようなテキストデータで楽しみたいという意見と、物語に費やせる時間資源は希少だから強制的に進行できる映画やオーディブルのような視聴覚資料を使いたいという意見があるよ。ただ、私は私がつらくなる表現は避けたいと(おそらく日本の多数派よりも)感じていて、耳には瞼が無いと言うように視聴覚資料ではそれが難しく、解釈さえしなければ意味の無い図柄に還るテキストデータではそれがしやすい。なので、単純に資源の都合で視聴覚資料を採用しようとは言えない事情があるよ。

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