三体0 球状閃電 - 読書メモ

  • 著者: 劉慈欣
  • 出版社: 早川書房
  • 出版年月日: 2022 年 12 月 21 日
  • ISBN: 9784152101945
  • ページ数: 434

あらすじ

プレリュード

「ぼく」は誕生日を迎え、祝われていた。父は何かに夢中になることが良い人生だと語る。球状の光が屋内に入り込んできて、父と母を炭に変えた。このとき、ぼくは生まれ変わった。いま、ぼくは父に言われた通り、夢中に人生をやっている。

第一部

球電研究がいかに絶望的か、先人たちが生涯を捧げるさまを通じて描かれる。

  1. 指導教官の大輝電気学副教授・張彬がかつて妻と共に球電研究をしていたことが明かされる。妻は観測によって命を落とし、張は足を悪くして研究から退く。
  2. 国防大学新概念兵器開発センターに勤める林雲とともに球電研究を始める。彼女の謎めいた生い立ちや兵器・スリルを愛する性格が描かれる。
  3. シベリアで、アレクサンドル・ゲーモフがかつて国家規模の球電研究に携わっていたことが明かされる。球電が発生する条件は規則性が無く、実験中の事故で妻子を亡くし、30 年を捧げた彼は打ちのめされた。若者がシベリアで亡霊を追いかけたことを誰かに知ってもらいたいと語り、抱擁を交わし別れる。

第二部

  1. 球電を兵器転用する実験が本格的に始まる。陸軍飛行隊の協力で球電を集めることに成功する。
  2. 理論物理学の超人、丁儀が仲間に加わる。(ここから雷球と呼ぶ)雷球を安全に取り扱うことができるようになり、巨大な電子であることが判明する。
  3. 原子力発電所の人質テロが発生、雷球兵器を利用して人質もろとも殺害。雷球兵器、初の実践使用。<ぼく>はかつてのトラウマを刺激され、軍との関わりを断ち、台風研究者になる。

第三部

  1. 雷球兵器の実践使用は各軍から期待されておらず、実際に使用しようとしたときは、敵軍にすでに対策が取られており使用できなかった。林雲は望みを断たれる。
  2. 丁儀は雷球に替わる巨大な<核>を発見する。林雲は核融合実験を強行し、自身も量子状態となる。IC が破壊され、国土の三分の一が農耕時代に戻る。
  3. <ぼく>は結婚した。覚えのある香水の匂いを感じると、青い薔薇が生けてある様子が一瞬だけみえた。自身が死ぬとき、もう一度見えるだろう。

まとめ

  1. <ぼく>は両親の死没をきっかけに球電を研究していた。軍の林雲とともに研究をするが、先行研究をしていた人たちからその絶望的な道のりを聞かされる。
  2. 球電兵器を作った。球電が巨大な電子であることも判明した。しかし、原子力発電所を占拠したテロリストと人質に対して実践使用したことをきっかけに退いて台風研究者になる。
  3. 軍では、球電の原子核バージョンも発見された。林雲は核融合実験を強行し、自らも量子状態になる。<ぼく>は結婚した。量子化した林雲から青い薔薇を受け取り、見えないけれども大事にする。

感想

三体シリーズの前日譚とのことなので読んだ。ただ、実際には三体よりも前に書かれた小説とのことなので並行世界として見た方が良さそう。三体にも出てきてるけど、スターシステムと解釈することにした。なにより、丁儀には研究を頑張って欲しいので、ミクロ世界への探究が封じられる未来へ繋がると思いたくない。

円城塔『エピローグ』では脳の中で兵器と美女は近いところにあると言われていたけど、そんな兵器の魅力に憑かれてしまった人が出てくる。旅立ってしまった人との付き合いも描かれている。意識すると消えてしまうけど、実は居るよ、というのは私に合った考え方の気がする。そして、劉慈欣らしい、ロマンチックなよい読後感。

ところでこれ、全世界の情報科学文明を滅ぼしかねないけど、核と同じで抑止力として使われるのかな。そこらへんは描かれていない。直近に観た映画が『オッペンハイマー』だったからちょっと気になった。

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