読書バリアフリー法
「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」2019 年 6 月に制定、施行
アクセシブルな書籍・電子書籍(視覚障害者等が自ら読める方式でつくられた書籍・電子書籍)の「借りる権利」に加え「買う自由」をも担保することを目的としている。
定義
- 視覚障害者等 = 視覚障害、発達障害、肢体不自由等の障害により、書籍について、視覚による表現の認識が困難な者
- アクセシブルな電子書籍 = デイジー図書・音声読上げ対応の電子書籍・オーディオブック等
- アクセシブルな書籍 = 点字図書・拡大図書等
出版社との軋轢
読書バリアフリー法は出版社に対してなにかを義務付けるような法律ではない。 フランスにおいては、著作権法が改正され(2006 年)、出版社に対して、障害者向けの電子データの提供が義務付けられたが、本法はそこまでの義務を課していない。国や地方公共団体に対し環境整備を促す法律である。
ただし、出版社あての要求ととれる箇所が二つある。
- アクセシブルな書籍等を制作する、登録された制作者に対して(著作権法施行令第 2 条第 1 項第 2 号)、出版社からテキストデータを提供すること。 - 第 11 条 2 項
- 書籍を購入した視覚障害者等からの求めに応じて、該当書籍のテキストデータを提供すること。 - 第 12 条
出版社は渋っている。
- テキストデータが流出する。
- 権利者との契約を確認する必要がある。
- 印刷所との関係によって費用が発生する。
電子書籍ストアの対応
「買う自由」を担保するためには、単に TTS 対応の EPUB で作られているだけでは足りない。販売サイトやビューワにも影響は及ぶ。
- 音声購入 = 音声読み上げ機能を用いてストアに行き購入することができる。
- 音声書棚 = 音声読み上げ機能を用いて書棚を開き書籍を選択できる。
JIS 規格が達成基準を制定している。JIS X 8341-3:2016
- JIS X 8341-3:2016 解説 - ウェブアクセシビリティ基盤委員会
- JIS X 8341-3:2016 達成基準早見表 - ウェブアクセシビリティ基盤委員会
- WCAG 2.0 - W3C (関連のある規格なので併記した)
また、デジタル庁がガイドブックを作成している。
出版業界の取り組み
出版業界から「アクセシブル・ブックス・サポートセンター」(ABSC)の構想が提案され、2021 年 9 月に同準備会が発足、2023年3月日本出版インフラセンター(JPO)に設立している。
出典
- 読書バリアフリー法 - 日本電子出版協会 一部改変。